Rubaiyat



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Godius小説~変わりつつある気持ち・変えなきゃならない現実~ 前編

 私が力を求めたきっかけは、そう珍しくない。ほとんどの人間、女子供ですら戦える力をもつこの世界じゃ、生活のためや復讐のために力を求めることなんて日常茶飯事だ。私も例に違わず、後者の理由で力を求めた。鋼と血の臭いにむせ返りそうになりながらも、異形の怪物たちによって肉塊に変えられた両親を思い浮かべて、憎悪の炎を絶やすことなく今まで戦い、生き続けてきている。
 そうして、復讐を達成するには十分すぎる力を得た今、私の心は満足感で満ちているかというと、そういうわけではない。先達が口を揃えて言う「復讐に意味はない」という台詞に私もカテゴライズされるのかと思うと舌打ち混じりに眉間に皺を寄せたくもなるが、心を埋め尽くす虚しさはその言葉を身をもって証明するには余りあるほどだった。またも先達の言葉を借りると、「時がたてば憎しみも風化する」とあり、事務的作業の“狩り”になりつつある最近の戦いをそのまま表していると言えよう。もはや、いたずらに力を誇示しつづけることに意味なんて無いのかもしれない。
 ならば私は、戦うことをやめられるのか?否、やめられるはずがない。幼いころから20余年、こればかりを学び続けた私に、今更どの道に進めというのだ。確かに中には、戦いで得た富で裁縫や、鍛冶などの職を開業するものも居れば、隠居して農業に精を出す者も居る。だがパゴール魔導師学会を破門され、ベルク正教会司祭の肩書きも剥奪された私は、魔導を教えることも神に祈ることもできはしないのだ。――そんな結論を自己の中で導き出して、何十回と繰り返してきた無駄な問答に終止符を打つのだけれど。
 この日は、いつもと違っていた。
 「園芸でもしたら?」
 ――彼女の台詞を問いただす前に、自己紹介をしておこう。私の名前はリーメル・シェホフ。全属性の魔法を使いこなすSageの役割を担いながらも、ため息交じりの毎日ばかり過ごして肌の艶と張りを失いつつある独身女性。それが私だ。
 でもまだ三十路前だから。それだけ、よろしく。


変わりつつある気持ち。変えなきゃならない現実。


 「園芸?――私が?」
 こめかみが痛くなるほど目を見開いて、私は尋ね返した。彼女は調理する姿勢を崩さないまま少しだけこちらへ顔を向ける。それに合わせて後頭部でくくったブロンドの髪がふわりと揺れた。
 「そうよ。貴女以外に誰が居るの?」
 彼女はいつもの笑顔を崩さないまま、あっけらかんとした調子で答えた。その毒気のなさに私はため息混じりに頬杖をつくのが精一杯だ。もっとも、そんな明るいところに惹かれたから彼女についてきたのだけれど。
 「ヘンル。貴女、私の話ちゃんと聞いてた?」
 ヘンルーダ、それが彼女の名前だ。長いブロンドの髪は戦場を潜り抜けてきたとは思えないほど艶やかで、顔立ちにも気品が残る。おせっかいなところが玉に瑕だけれど、それも彼女の優しさからきているものだと思えば安いものだ。本当の瑕は、少々おっとりしているところなのかもしれないけれど。
 もちろん聞いていますわよ、とヘンルは笑顔で答えるとフライパンをそのままテーブルの上においた。熱された鉄板の上では、トルイカ草とヤダカイの根、キヨリ鳥の卵の炒め物が菜種油と一緒に合奏を奏でている。香ばしく立ち上る香りは朝一番の食欲を発起させるには十分だ。野営地での調理とは思えないほどだ。ひとまず園芸の話は置いといて、まずは玉子焼きを食べることから始めるべきだろう。
 私がすばやくタラ樹のフォークに手を伸ばした時、横手のテントから大きなあくびがあがり、大柄な影が飛び出してきた。
 「ああ、美味しそうな匂いだな。食べるならやっぱりヘンルの料理に限るね」
 短い紫の髪の毛は首の辺りでちょこんとくくられていて、筋張った首筋をあらわにしている。背の高い、がっしりとした体躯でありながら、端正なつくりの顔立ちは彼女が女性であることをこれでもかと主張していた。
 「おはよう、ザント」
 彼女は砂時計(ザンドゥール)なんて洒落た偽名で通している。呼びづらいし、女性の名としてはイメージが暗いから最初の砂(ザント)だけを取って呼ぶことにしたそうだ。褐色の肌はそこかしこが荒れていて、腕や足は武器や甲冑に因る傷と肉刺が見て取れる。それでも瞳は優しげで、頼れる姉御といった感じだ。ただ年の話をすると殺されかねないから、姉御だなんて口が裂けても言えないけれど。
 「おはよう、リーメル。少しは慣れたか?」
 何に慣れたかなんて、たずねるまでもないだろう。ヘンルとザント、そして私が所属するギルドに関してだ。きっと来るであろうこの質問に、私はこう答えようと一昨日くらいから決めていた。
 私の肩を軽く叩いたザントの手を乗せたまま、私は肩を竦める。
 「ギルドの名前以外はね」
 私の答えに、二人は顔を見合わせ、一呼吸置いて笑い出す。えー、ひどいなぁ。いや、言えてるよ。彼女たちの笑顔があふれるこのギルド。沸き立つ戦で荒む世界に少しでも笑顔を、という気持ちで作られたギルド“にゃはは”。その信念はすごく共感できる。現に今目の前で二人が笑顔を見せてくれることはすごくうれしい。――けれど、私が笑うにはまだ少し早すぎる気がして。だから私が浮かべる笑顔は、いつもどこか乾いていた。

 
 「それで、考えてくれた?園芸の話」
 朝食を食べ終わりフォークを咥えて弄んでる私に、ヘンルは話を蒸し返してきた。どうやらこのお嬢様は私に園芸をやらせたくて仕方がないらしい。
 「園芸?何の話だ?」
 武器の手入れをしていたザントも首を突っ込んできた。まさかあの恥ずかしい話をザントにも説明しなくてはいけないんだろうか。ヘンルに言ったのだって、ちょっと早く起きた朝が少し暗くて、なんとなく物寂しくて口が滑ったわけで。こんな意識のはっきりした状態で、お天道様の真下で公開されるのは、気だけじゃなくて腰まで引ける。左の頬から右の頬まで紅色の道が通りそうだ。
 「リメさんがね、手持ち無沙汰だから何か熱中できる趣味がほしいんだって」
 誤魔化したのか、それとも彼女が私の話をそう理解したのかは私には分からないが、あの恥ずかしい身の上話をする必要がなくなったのは良いことだ。ヘンルのやさしさに助けられたと思っておこう。
 ザントはそれで納得したのか、あまり興味がなさそうに、へぇ、と相槌を打つだけにとどまった。
 「園芸ったって――どうやるのさ?」
 私はこれまで、園芸なんて考えたこともなかった。確かに民家によっては軒下にプランターを備えてあったり、綺麗な花壇を設けているものもあったが、それを自分で手を加えて作るだなんて思いもよらなかったのだ。植木鉢はどういうものがいいのだろうか。土はどんな質のものを使うのだろう。どんな気候が、気温が合うのだろうか。挙げきれないほどの疑問が出てきたが、ヘンルはそれに一言で答えた。
 「ジョウロくらい使えるでしょ!」
 ――そりゃあ、使えますよ、はい。私も一応、27年生きてきましたから。でも、なんか違う気がするんだけど。
 「じゃ、じゃあ何を育てろと――?」
 綺麗な花を育てるにはそれなりの準備が必要だし、何より安定した気候と常日頃のケアが大事なはずだ。たとえばリオランだと東南部半島などの湿度が高くて暑いところにしか生息してないし、ダユータやアーダハなどのカラフルな花は、首都あたりでないと育てるのが難しいはずだ。私は短い時間で必死に悩んだ。だがヘンルーダ様は自分の道をまっしぐらに進んでいる。残念なことに、進みすぎて周りが見えていないらしい。
 「ほらまず簡単なところで、アジラタとかどうかな」
 ――年中色も変化せず、極小の水量で何十年も生きる観葉植物で何をしろと。
 「トルイカ草とか育てればいいんじゃない!?ラムパス湿原で大量に作って食費を浮かせてさ!」
 ザント、それは園芸じゃなくて農業だよ。まともな意見を期待すること自体が間違っていたのだろうか。私はため息混じりに最後の質問をする。
 「何故園芸を勧めたの?」
 あっさりとした口調でたずねると、ヘンルの笑顔が突然やさしげな面持ちに変わった。急な変化に私は聊か面食らう。ヘンルは少し目を伏せると、すぐに青空を見上げた。
 「園芸に限らず、何かを育てることってすごく素敵なことだと思わない?自分の手に命がゆだねられてる瞬間は、すごく大きな責任を背負った気分になるけれど、大事に育て上げることができたときの喜びは、何にも替え難いと私は思うの」
 何か勉強になるかもしれないよ、それが勧めた理由かな。ヘンルはそこで区切ると、少しだけ頬を紅潮させて、いそいそと朝食の片づけを始めた。ザントは軽く微笑んで、武器の手入れを続行する。私は加えていたフォークを親指と人差し指で持ち上げて、三叉の矛先を見つめた。
 命といえば、奪うばかりの日々だった。防戦とは言え、モンスターだけでなくタペリ人の命すらも蹂躙して、私は今ここに生きている。そんな私が、命を育てる? これは贖罪なのだろうか。それとも、今までの自分を正当化するための言い訳なのだろうか。贖罪も、言い訳も、私は好きじゃない。けれど、命を育てること、そしてそれによって得られるであろうおぼろげな答えに、強烈に惹かれている私自身があることを、私はこれ以上隠すことはできなかった。
 「――やって、みようかな」
 ぽつりともらした私のつぶやきに、ヘンルは満面の笑みを返してくれた。



こんばんわ。久しぶりの更新です。
今回の小説は私のやっているネットゲーム、ガディウスを舞台にした小説です。
主人公の悩みをうまく解消できるラストにもっていけたらと思います。
後編にご期待ください。
陸でした。
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by hisaya_rikudo | 2006-04-22 04:10 | 小説

世界は、画一されたからこそ、多様であり続ける


世界は美しい。
私は常々そう思う。

「山」という一つの単語に、一体如何程の山が隠れているか、
貴方は考えたことがあるか。
砂を盛り上げても「山」であり、日本一の標高を誇る富士山も「山」である。
木々生い茂る日本の山々も「山」であり、岩尖る欧米の山々も山である。
簡素化された記号の中に目まぐるしく広がる多様性は、マテリアルから抽出した幾許かの情報により構成される言語で補填できるはずもない。
だからこそ私は実態を形成する必要の無い、全てを包括する感傷的な言葉で、世界を表すのだ。
そう――美しいと。

人が生れ落ちて幾星霜、とうとう人は環境破壊を謳い出した。
まるでそれが、地震や噴火などの自然災害の脅威のように。
だが、起きて当然なのだ。
多様を旨とする世界に対し、簡素化した記号で画一化を図る我々が相容れるはずがない。
「世界」という言葉は世界があってこそ存在しうるのではなく
「世界」という言葉を我々が作ってしまったために、この世界は「我々を除いた世界」になってしまったのだと――我々は自らが多様性の一部であることを無意識的に除外してしまったのだと我々が自覚しなければ、世界が我々を否定することに納得などできはしない。
本来我々は多様性の一部なのだ。
そして多様性は、一部を無作為に淘汰し、一部を無作為に繁栄させることで巡り巡ってきた。
つまり、我々は今回、偶々淘汰される側に立ったにすぎないのだ。
かといって、対策を講じることは無駄な足掻きだと思わない。
世界の行進は無闇矢鱈に、されど一本道で、結末へと休み無く続く。
その中で我々が崩壊を止めるも、助長するも、傍観するも、
全ては一本道の廊下に飾られた絵画にすぎないのだから。
だからこそ、私は実態を形成する必要の無い、全てを包括する感傷的な言葉で、我々自身も含んだ世界を表すのだ。
そう――美しいと。


久々更新の陸です。こんばんわ。
とりあえず難しい言葉を使ってみたかっただけの詩です。
詩なのかどうかも疑問です。

徳島生活も一週間を過ぎまして結構気楽にやってます。
仕事はいままでやったことないことやってるんで非常に難しいとです。
はやいとこ仕事を覚えたいですねー。
陸でした。
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by hisaya_rikudo | 2006-04-01 00:20 |


御国を守ります。
桜並木を切り飛ばす。

作品力を上げたい!同盟参加してます。

HN:陸堂久弥
好きなもの:麻雀
嫌いなもの:チョン
潰したいもの:創価学会
応援してるもの:又吉イエス
乗りたいモビルファイター:
ネオオランダ代表ネーデルガンダム
持病:中ニ病

長編
■Diabolia(連載中)
Infomation
クエストファイル1
王者の剣
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クエストファイル2
白昼の暗器
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Diabolia外伝
~陰謀と策略の影の愛情~
[1][2][3][4][5][6]
ある戦場にて(一話のみ)
記憶を濡らす琥珀酒(日向過去話)
幕間~霧上魔狐兎とゲイル・マクミール~


■兎に角なし(連載中)
キャラクター紹介
[1][2]


短編

赤い花

梅雨に乾杯

貫けた誓い

Time Insteae of Money

葬列の少女

四百字詰めの原稿用紙




ある殺人者の独白

僕は彼女が好きなんだ

フィオラ・ダンテの詩

悲しき呟き

空を飛んだ少年

My Name Is Time

偉大なる先達を讃えて

カチタイ。イキノコリタイ。

僕は道化

蜃気楼のオアシス

身勝手なHappyBirthday

エルフの御伽噺

生まれながらにして孤独
死に絶えるもまた孤独


タイトル省略

りんく

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朝目新聞

裏ドラゴンボールマニア

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2ちゃんねる

世界経済共同体党
(代表 又吉イエス)


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