Rubaiyat



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気まぐれで書いたSS

SnowWhiteのサブストーリー
サーフィス主役のショートショートです。
ザインとサーフィスが出会う四年以上も前の話。
stage16から17の間でのサーフィスの台詞を覚えていたら、どの辺りの話なのか分かる人も居るでしょう。



呟く死者、遮る死者


「リシャールが死んだんだって?」
 僕が態々友の死を確認したのは、それが驚きだったからじゃない。ただ、待機中に途切れた会話を繋ぐ為ってだけだ。幅広の刃を腰にぶら下げた赤毛の男は、僕の問いかけに粗野な鼻息を返す。
「ああ。ジリウス丘陵でエタニア兵の奇襲を受けたらしい」
 全く、何やってんだか。彼はそう締めくくると、苦悩と悲しみと、そして少しの怒りを混ぜた溜息を吐き出した。
「随分とよく死ぬねぇ、最近」
 僕は決して情が無いわけじゃない。人よりそれが薄いという自覚はあるが、それでも同じ釜の飯を食った仲の人間が死ぬことに全く無関心でいられるほど、薄情であるつもりは毛頭ない。
 じゃあ何故、友の死を他人事のように口に出すのか。答えは簡単。慣れてしまっただけだ。流石に、両手に余るほど死なれたら、もう涙なんて流れない。
「こんな世の中で、そして俺らはこういう仕事だ。当然だろう」
 にべもなく言い放つ彼は、書きなぐる書類から目線を離そうともしなかった。彼も別段冷たい人間というわけではない。同じく慣れてしまった。それだけだ。
 僕は何となく煮え切らなくなって、羽ペンを放り投げ、背もたれに身を預けた。身体を伸ばす開放感と、椅子のきしむ声が、心地よさと不快さをかき混ぜる。
「主の御許へ行っちまったかぁ。あっちでも元気に走り回ってるといいんだけどね」
 何気なく虚空へ投げかけた独り言が、どうも彼の興味を引いたようで、彼はこちらに顔を上げると、呆けたような目で僕の顔をしげしげと眺めていた。
「お前がそんなくだらないこと言うなんてな。ろくに礼拝もしないくせに」
 ――言われてみれば確かに柄じゃないことを呟いたものだ。彼に指摘されるのは、聊か筋違いな気もするけれど。
 とりあえず嫌味の一つでも言っておこう。
「君は大層敬虔な教徒だもんねぇ。その火みたいな髪の毛から引火すれば火葬の手間いらずだし、ここは一つ主の御許へ社会研修でも行ってみたらどうだい?くすぶる燃えカスのリッド君」
 不意を突かれたのか、赤髪の彼――第23大隊副隊長リッド・シュールは僕の嫌味に眉をひそめた後、唯でさえ目つきの悪い目をさらに細くする。
「お前が行って来たらどうだ?今なら特大キャンプファイヤーも一緒にサービスしてやる」
 こういうやり取りをするたび、彼にはジョークの才能がないなと思う。全くジョークに聞こえないからだ。殺気を垂れ流しながら冗談を言うのは悪趣味なことこの上ない。
 冗談じゃないのかもしれないが。
「ここで火を出すと書類が燃えるよ。――ていうか何を書いてるのさ。僕はこないだ師団長の盆栽割った時の始末書なんだけど」
 一張羅を焦がされるのはたまったもんじゃないので、僕はしれっと話題を逸らすことに決めた。
「…」
 殺気を重ねてくるだろう、という僕の想像は裏切られ、彼は一転して曇天のように押し黙った。僕の瞳は困惑の色に揺れる。彼の目線は僕の目線から外れ、そして何も無いはずの天井の一角をひとしきり眺めた後、書類の上へと落とされた。
「…エタニア軍への潜入と情報収集に関する計画書だ」
「…は?」
 間抜けな吐息が漏れた。あまりにも馬鹿馬鹿しいその内容に。本当に彼はジョークが下手糞だ。そんなハイリスクハイリターンな任務の計画書に、今にもサインを臨もうとするなんざ、誰が見たって笑えない。それこそ、僕が見たって。
「面白いぜこの書類。命令されて書いているってのに、『敵対行動によって命を落とすのは自己責任』だとかご丁寧に記してやがる。これを作った奴は、国語が相当下手糞なんだろうな」
 彼の冷めた話し方が、妙に寂しい。まるで死人と喋っているような気分だ。今まで何度か味わってきたこの気分。そしてそれは確実に、喋れない死人を生み出してきた。
 舌が、乾く。
 リッドは書類から目を上げ、しかし僕の方には目をやらず、目の前の壁をただ見上げた。
「誰かがやらなきゃならねぇ。そして俺がやることになった。ただそれだけの話だ」
 分かっている。僕達は軍人で、今は戦争中だ。命を賭けるのは至極当然で、奇麗事にすら及ばない。仕事なんだから。
 僕は、心に決めた。そして、不器用ながら笑顔を搾り出す。
「しばらく、会えなくなるね」
 リッドは僕の台詞に珍しく笑った。悲しみを噛み締めながら。
「今生の別れかもしれんがな」
 やはりリッドは、冗談が下手糞だ。
「はは、縁起でもないことを――」
 ここで区切り、僕は

 全力で手刀を振り下ろした。

 寸分違わずリッドの首筋に命中したそれは、確実に彼の意識を分断する。ごとりと無機質な音を立てて、彼は絨毯の上にその身を横たえた。
「――言うなよな。全く」
 彼を気絶するほどに殴りつけた理由は、自分でもいまいち分からない。彼も、僕が会話のつなぎにでもする、一人の死人になるだけだった。そんなことは百も承知だった。
 けれど、思ってしまったんだ。それは、彼が会話のつなぎに僕の死を使っても、同じことじゃないのかって。
 僕は書類に向かって羽ペンを走らせる。それはしかしくだらない始末書なんかではなく、リッドの書類だ。最後のサインの欄に書かれるはずだったリッド・シュールという名前を無視して僕は一気にペンを走らせる。
 第23大隊長サーフィス・アバンダンと。
 僕はその書類を手に取り、床で眠るリッドを一瞥する。
「言ったろ?しばらく会えなくなるってさ」
 我ながら冗談が下手だなと思い、僕は部屋を、そしてアロパエル軍を後にした。





リッドって、第1師団に居なかったっけ?って思う人も居るでしょう。
この時点では、リッドは第12大隊長ではなく、第23大隊副隊長でした。
ゲーム中では語られないので知らなくても問題ありません。
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by hisaya_rikudo | 2009-04-30 18:27 | 小説


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幕間~霧上魔狐兎とゲイル・マクミール~


■兎に角なし(連載中)
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梅雨に乾杯

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フィオラ・ダンテの詩

悲しき呟き

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My Name Is Time

偉大なる先達を讃えて

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僕は道化

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